読んだ。
- 作者: 太平洋戦争研究会
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 文庫
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http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20120216/1329075699
社会経済情勢、あるいは政治情勢すらをも捨象して、とにかく昭和陸軍(とりわけ軍務官僚)を中心とした記述がぶれることなく貫かれていること。
ということもなく様々な社会背景が紹介される。財閥のドル買い、緊縮財政によるデフレ、そして東北地方を襲った大飢饉。有名な写真ももちろん掲載されている。
なんとなく小骨が刺さっていた5.15事件についてもよく分かった。当該事件は海軍青年将校(皇道派)が決起したものだが、呼びかけられた陸軍皇道派青年将校たちは参加しなかった。なぜなのか?陸軍士官学校生が参加していたことがヒントになるかな。
ここでは触れないが、宇垣一成を中心とする宇垣派の盛と衰も分かる。また、2.26事件で皇道派が衰退していった事情もよく分かる。単純に皇道派青年将校を中心に事件が引き起こされたからではない。
また、事件当時の新聞が、これでもかというくらい多肢に渡って掲載されている。この新聞紙面の絵解きをすると想像力が広がり面白い。たとえば、
これは、2月27日付「東京朝日新聞」の見出し。この時点では、首相すなわち岡田啓介が難を逃れたことは発表されていない。これが問題なのではなく配列。
と、よく分かって面白いばかりだったんだけれども、次の引用は興味深かった。
1937年(昭和12年)(略)北一輝の銃殺刑が執行された。直前に西田が、「天皇陛下万歳を三唱しましょうか」と問うと、北一輝は「俺は死ぬ前には冗談を言わないよ」と答えたという。
事件の本質を表しているのかもしれない。
さて、先に述べたように本作は丸ごと一冊2.26だが、以前に拾った本、
http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20120112/1326323080
松本清張「昭和史発掘」はものすごい。まず第7巻、第8巻、第9巻まで続きで持っている。しばらく欠落の後、第12巻。目次をみると、まず第7巻で二.二六(1)、欠落後の第12巻で二.二六(6)とあり、少なくとも6冊に渡り2.26三昧なのだ。このシリーズ。ひどく読みにくいんだけれども、ちょくちょこと読んでいこう。
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2月26日(日)に彷徨した国会議事堂近辺は事件の舞台。大雪の気配はまったくなかったけれども。