けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ブルックナー交響曲第8番:裏庭で感じた突き抜ける天空

エントリに書くか迷っていた。というのは本やCDなんかの感想文を書くと、奇特な人が追体験できると思うのだけど、演奏会の話を書いても何の足しにもならないから。しかしチラシの裏として自分のためにメモとして書いてみる。
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少し前、六本木に行ってきた。
イカレタ、じゃなくてイカシタ(死語?)サラリーパーソンたちが風を切って歩いていた。これから女子アナウンサーたちと楽しい夕べを過ごすのかな?
彼ら彼女たちが持っていないものはなんだろう。良心?謙虚さ?陽だまりの幸せ?そんなもの、私も金輪際持っていない。私が持っているのは10センチちょっとの紙っきれだけ。
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2012年6月7日(木)六本木のサントリーホールパーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団。演奏曲目はメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」とブルックナー交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク第2稿)という神をも恐れぬプログラムだった。
チケットは18,000円という莫大な大枚叩いて購入した。でも、ブルックナー交響曲第8番って一番好きな曲だしフランクフルト放送交響楽団って好きなオーケストラのベスト5に入る。
現在、市場に流通しているブルックナー8番のCDをすべて買い漁った中(ほとんど持っていたけど2枚くらい新しく購入した)で2番目に良かったオーケストラがインバル指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏。

ブルックナー:交響曲第8番

ブルックナー:交響曲第8番

RCが歌った「3番目に大事なもの」の3番目ではなくて2番目*1に良かった音源。
客席は前方右前から3列目。正直、チェロ、コントラバスコンマス、そしてバイオリンコンチェルトのソリストしか見えない。私は天空にとどかんばかりの第3楽章の裏庭を聴き、眼に焼き付けたかった。
さてブルックナー交響曲第8番の「前座」というべきバイオリンコンチェルト。ソリストヒラリー・ハーンという女性なんだけど太く硬くいい音を出していた。ここで、アンコール。バッハ二曲。人が変わったように繊細な音を出していたなあ。
この時点で、開演から1時間経過していた。開場じゃなくて開演。
そしてなによりもブルックナー第8番の第3楽章。私は天空に飛んていたなあ。
むかしウィーンフィルの小遣い稼ぎ(失礼)演奏を聴きに行った後輩が「コントラバスは打楽器だよな!」って、現役の時と変わらない感想(?)を二年後くらいにメーリングリストで進歩泣くほざいていた。
私の「眼にした」コントラバスはとても優しかった。ピッチカートみたいに優しい音をアルコで響かせる。
演奏者たる彼ら彼女たちの恐ろしいまでの優しい音が私の心を突き抜けたよ。なんか泣きたくなる、というのではなく涙も枯れ果てたような、なんというか呆然、というか変な話だけど苦しくなった。
最後の挨拶ではコントラバス奏者たちに手が腫れるまでに拍手をした。何人かの奏者は私に向かって微笑んでくれた。危険きわまりないい共時性だな。
話が戻って第4楽章。正直、場所取りを間違えた。彼ら彼女らがパイプオルガンみたいに(陳腐な表現*2)響かせるハーモニーが会場を包んだ。しかし、私には彼ら彼女らの姿はまったく見えなかった。音は凄かったけど、フィナーレは「観た」かったなあ。
そして、日本人観客の御家芸たる「ブラボウ@!」も残響がなくなるまでなかった。みんな圧倒されたのかな?私は暗い心の闇を抱きながらも、ほんの少しだけ、陽だまりの幸せを勝ち取った。
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開場までの時間つぶし(開場の1時間半前に到着していた)として喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら煙草を吸いたかったのだけど、煙草バッシングがものすごかった。なんとかバーみたいなところで、アイスコーヒーを飲み、煙草を吸い熱くなった心を落ち着かせた。
いやあ、ここのコーヒーがべらぼうに美味かったぞ。小悪魔的な六本木だから、ずいぶんとブン獲られるだろうなあ、と思っていたら400円。
ちなみにそのバーみたいなところは東南アジア系のビールもたくさん置いてあり、演奏会後にステキな人と乾杯したいものだよ!って思った。

参考:ブルックナー交響曲第八番ハ短調:声なき声が鳴り響く

*1:ちなみに一番好きなのは、オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン

*2:ブルックナーを語るときに絶対に言及される言葉。免罪符。