けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 小林由美「超・格差社会アメリカの真実」〜パトロンは死語ではないのだね。

昨年半ばからアメリカら関係の本をたくさん読んだ。その白眉が本書。奥付を見ると、「単行本 2006年9月 日系BP 社刊」とあり、昨今の金融危機、産業危機に至る問題は、スルーだろうかね?と思いながら、立ち読みしたら、文庫化にあたり、しっかりとフォローされている。こういうのって嬉しいね。

超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)

超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫)

本書では日本でも流布されている「常識」が紹介されています。

金融資産に限ってみると、上位集中は一層顕著になる。トップ1%がほぼ4割を押さえ。上位5%で3分の2を押さえている。

このあたりは、私の頭にインプットされていた情報。で、上位1%の富裕層はナニをしているのかな?引用してみましょう。

アメリカでは、ニューヨークやサンフランシスコのような大都市に行くと、オペラ・シンフォニー・美術館等、世界の超一流芸術をどんな国よりも安い値段で楽しめる。(略)それにしても、なぜ安いのか?先に挙げた「特権階級」の人々が”パトロン”として支えてくれているからだ。(略)特権階級からの莫大な寄付があってはじめて、こうした芸術はなりたっている。(略)前衛的なオペラ妙な展覧会が開催されるときは。大パトロンの趣味が反映されていると思って間違いない。

うむ。お抱え芸術家のパトロンですか・・・この志向は、彼らの虚栄心、私の羨望を横に置くと、なかなか良いことに思われます。

次に、私が一番、ほほう!と感銘を受けた記述を引用してみましょう。

ヨーロッパでは、富裕であることは(ハヴィング・マネー)は良いことだ、富を作ること(メイキング・マネー)は悪いことだった。だからヨーロッパの特権階級層は自らの財産が相続した富であることや家柄を常に強調する。一方のアメリカでは「メイキング・マネー)こそが良いことだで尊敬に値する行為であり、個人の価値を測る中心的な尺度となった。

アメリカは、貪欲に富を求めるバカモノだと断じることなく、西欧文化の根底と比較して、マネー・マネーを考察しているところに共感が得られます。

このことは、本書全体を通じて、実例を挙げて淡々を記述されていることが印象的です。

最後にアメリカ人のオプティミズムについて引用しましょう。

そもそもアメリカでは経済力が唯一の価値基準だから、無理をしてでも派手に外見を飾り、楽しく順調にやっているように振舞う人が多いことも事実だ。自動車ローンを借りては高級車を買い、クレジット・カードで最新流行のブランド品を買い、目一杯に住宅ローンを借りて高級な家具を買い、ブレスト・インプラントや美容整形をすることが人生の当たり前の姿だと思っている人も多い。

うむ。ココまで来ると、凡人の日本人たる私には、彼らの行動様式が彼我の感がありますね。本書の別の箇所に示唆されていますが、広大なフロンティアを有する(有した)国民性の表れなのかな?と思ってしまいます。

さて、本書のまとめ。私は、印象に残った部分を引用してきましたが、「超格差社会」という書名にたがわず、さらにブルージーな分析も書かれている反面、アメリカという「文化」に基づく新種の精神についても書かれています。

他にも、アメリカ大統領の出自(?)やシンクタンクについても、目からうろこポロロな話が続いています。また、冒頭に書きましたとおり、文庫化にあたり、2008年の所謂サブプライム問題についても加筆されています。非常にわかりやすい分析で、この箇所だけでも読んでみると、いろいろと考えさせられる良書です。