けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」(早川書房):6月24日(水)

しばらく前に読んだ。

私が読んだのは一山いくらで購入したハヤカワのポケミス版。
しばらく前に書いた結城昌治は「ウィチャリー」のトリックに満足いかず「暗い落日」を書いたということを何かで読んだ。たしか「暗い落日」の解説だったと思う。
ということで本書は「落日」を読んだ向きには物足りないかもしれない。しかし私はといえばそれでも大いに満足した。ただし余韻は「落日」に軍配。
「ウィチャリー」(ポケミス版)の紹介記事を引用。

アメリカの『家庭の悲劇』を描く作者の最高傑作!ロス・マクドナルド、1961年発表の問題作!

たしかに家庭の悲劇の物語。しかし1961年という半世紀前の言説であり、現在から本書を概観すると、このような家族の悲劇(小説世界における)は決して悲劇のうちに入らないと思う。悲劇小説が苦手な私としては安堵感をもって読了した。
本書の訳者は小笠原豊樹。あいかわらずお見事なる訳出だ。ケレンはもちろんなにしろリズム感がいい。とにかく翻訳が素晴らしく海外物の作品とは思えない読みやすさ。この人の訳出は本当にすばらしいな。