- 作者: 白川道
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/01/30
- メディア: 文庫
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で、その「思い出せない」理由が、本書「終着駅」を読んで、少し分った気がした。まず、読んでいる最中に「泣かせ所」で私は落涙して作者の罠に嵌ってしまうことが、原因の一つとして考えられる。涙の思い出、って歌謡曲みたいだけど、そんな感じ。
さらに大きな原因というのは、物語に対して、過度なる感情移入を行ってしまい、読了後、私は物語から離れようとするのだ。意識的に。
なんでやねん?と問われると、中々上手く答えられないのだけど。なんとか、頑張って書いてみると、物語は「物語」として続くという気持ちが生じてしまう一方で、物語は完結しているという矛盾。そして、物語の外部に私がいるという乖離。
もちろん、この矛盾及び乖離は、「さあ、ここで問題です。物語の終わった後、彼ら彼女らはどうなったでしょうか?想像してみましょう!!」と小学生の頃に教わった素晴らしい問い掛けとも一致する。矛盾が矛盾するのはなぜだろうか?
それは、私が「大人」になったから。
大人である私は、過度に感情移入した物語を読了後、いつまでも物語世界の余韻に浸って現実逃避しているわけにはいかない。これは、とても悲しいことかも知れない。でも、現実生活が眼前に峻厳と立ち上がっているわけで。
そして、これは言い訳の部類に入るかも知れないけれども、大人になって感情移入して読んだ物語って、結構、重たいものがある。それは、生活してきた時間が長い分だけ、「生活の垢」みたいなものが根雪のように堆積しているからだと思う。
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で、話が戻って、白川道「終着駅」について。これは、彼の最高傑作*2だと思うし、今まで読んできた本の中で、流れた涙の分量的には、五本指に入る。
ただ、難点は題名の通り、物語の「終着駅」が分ってしまうこと。しかし、そこで示唆される「奇跡」というか、モゴモゴは、光り輝いている。ちょっとネタを明かすと(読む上で支障はないと思います)、本作は「光の物語」。