けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 酒をやめたことについて:Raymond Chandlerの試訳から思いを寄せて。


酒を飲むのをやめて1年が経過したので、心境やとりわけ精神状態も含めた体調についてメモしておこうと思って、その前段として使おうと考えた過去エントリを自己ブックマークしておいたら、なんだかたくさんの人にブックマークされた(14ブックマークというのは私にとっては大いにたくさんなんだ)。
嬉しいんだけど、ちょっと怖いなというか不思議な感じがするよ。こちら。
けろやん。メモー酒をやめてコンビニに行かなくなったこと。
ご覧のとおり2015年12月29日に書いたものが、半年たってたくさんの人の目に触れたっていうことみたいだ。そして、寄せられたコメントによると、

はてなブックマークトップページのガールズにのってるけど、そっか、ガールだったのか?

???。いや、私がガールであるか否かはどうでもイイんだけど(おっさんだよ)「はてなブックマークトップページのガールズ」っていったいなんなんだ?
そんなわけで、予定通り「断酒一年を経過したので云々」を先のエントリを書いた時からの半年間の変化を中心に書こうと思っていたんだけど、パソコンを立ち上げる前にチラシの裏に書いたメモ(Raymond Chandler「The Long Goodbye」の比較訳と私の試訳)を公開しようと思い立っていたのでそれを書いていくよ。
チラシしたのは2014年11月9日ということで、今回の一年間の断酒を始める半年前に書いたもの。書いた理由は、なによりもRaymond Chandlerの文章がすてきだったので、それを抜き書きするというのが第一義的なものだっただろうけど、書いた当時から酒をやめようと思っていたのだろうなあ。
よしっ!いくぞ!
まず原文。

The Long Goodbye: A Novel (Philip Marlowe series Book 6) (English Edition)

The Long Goodbye: A Novel (Philip Marlowe series Book 6) (English Edition)

"Maybe I can quit drinking one of these days.They all say that,don't they?"
"It takes about three years."
"Three years?"He looked shocked.
"Usually it does.It different world.You have to get used to a paler set of colors,a quiter lot of sounds.You have to allow for relapeses.All the people you used to know well will get to be just a little strange.You won't even like most of them,and they won't like you too well."

清水俊二

「ぼくもいまに酒がやめられるかもしれない。だれでもそういうがね」「およそ三年かかる」「三年?」彼は驚いたようだった。「ふつうはそうだ。世界がちがってくる。うすい色や静かな音になれなければならない。いままでよく知っていた人間が見なれない人間に見えてくる。会うのがいやにさえなって、向こうからも嫌われる。」

村上春樹

「近いうちに酒を断つつもりでいる。でもこれはきっと酔っぱらいの口にする決まり文句だね」「酒を断つには三年ばかりかかる」「三年か」彼はショックを受けたようだった。
「通常はね。君はぜんぜん別の世界に行くんだ。そこではあらゆる色が少しずつ淡くなり、ある種の音が少しずつ静かになる。それに慣れなくちゃならない。ちょっとしたきっかけで、元の状態に逆戻りしてしまうこともある。これまでよく知っていた人たちがみんな少しずつ妙な感じに見え始める。君には彼らのおおかたが気に入らなくなるだろうし、向こうだって君のことをあまりこころよくは思わないだろう」

私の試訳

「しばらくすると酒をやめられるかもしれない。みんなが言うことだろうけどね」「それには三年くらいかかる」「三年?」彼は驚いたようだった。「ふつうはね。違う世界だ。薄い色や静かな音に慣れなくてはならない。元に戻ってしまうことも覚悟しなければならない。いままでよく知っていた人間が別人にみえるだろう。きみは彼らのほとんどを好きじゃなくなり、彼らもきみを好きじゃなくなるだろう」

清水訳と村上訳の賛否については、前者が原文を削って訳しているということに否があるということが巷間指摘される。そして村上は原文に忠実に(省略することなくという意味で)訳しているのだが、そのことがすなわち村上訳の賛であるというわけではない。というような話は横において。
問題は、酒をやめた私(三年ではなく一年だけど)が、この文章からなにを教訓とすべきかということ。試訳から引用。

薄い色や静かな音に慣れなくてはならない。

この前提として、飲酒していると感覚がビビッドになり、酒をやめることによりその鮮明さが薄らいでしまうということがあると示唆している。そして、そのような刺激の小ささに慣れねばならないということだろう。これについては大丈夫。つまらない人間だと思われるかもしれないけど、刺激の小ささ(平穏)には満足していると思う。

元に戻ってしまうことも覚悟しなければならない。

怖い。とりわけ独り立ち飲み屋で、独り部屋で、自分の意識を麻痺させようと飲んでいた情景。自己破壊の所業だった。あんな生活には、決して戻りたくない。

いままでよく知っていた人間が別人にみえるだろう。

あたっている。正確には、別人に見えるというのではなく、現実感覚が欠落して人がふわふわと感じられる。離人症を患っている人の感覚ってこういう感じなのかなあ。
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なんか中途半端なんだけど、今回はこの辺で。