けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 月に反吐するアクセサリー

先日、知り合いのおっさんに酷い店に連れて行かれた。新宿。
彼の行きつけの店ということで、招待してくれたんだ。もちろん招待という意味合いもあったのだろうけれども、彼のアクセサリーとして私が首根っこを掴まれたという意味の濃度が90パーセント。でも、私としては、大人の社会科見学ということで。
おでん屋。妖怪みたいなババア(蔑称する理由は後述)が出てきて、私のことを根掘り葉掘り聞いてくるは、震える手でビールを注いでくれるは、で大変。私は、人が注ぐ(注いでくれる)ビールって大嫌いなんだよね。
という私の好みは横に置いておいて。
参ったのは、「このおでん美味しいでしょ?汁が大変なのよ!美味しいでしょ?」って喰うそばから言ってくる。私も大人なので「いや、美味しいです」って答えながら、スーパーのおでん袋の方が美味いよな、って目を左斜め上に泳がせていた。
で、「この店は何年やっていると思う?何年もやっているのよ!」。いや、何年もやっているのよの何年の記憶がない。うるさいから聞いた瞬間に忘却の術を使って消した。店やって何年自慢って大嫌いなんだよね。
という私の好みは横に置いておいて。
おもむろに、日本酒のお銚子とお猪口が目の前のカウンターに出てきた。ん?私は日本酒を飲めないし、連れのおっさんが日本酒を飲んでる姿も見たことないぞ。ん?
と思ったらババアが手酌で飲み始めやがった。私にビールを注いでくれた震える手で、小さなお猪口に酒を注いでいる。で、瞬間的に酔いが回り始めたらしく、べらべらしゃべりが止まらなくなった。
私は、左斜め上に泳がせていた目を止めた。泳ぐのやめてガードに入る。宙空に硬いまなざしを向けて相手に嫌悪感を与える構え。私の放つ無言の嫌悪感は強力なので、酔いの入ったババアも一瞬で察知して、私の連れのおっさんへと体の向きを変えた。
しかし、こういう店が何年もやっているのよ!っていうことは、こういう風が好きな人がいるってことだね。私は、店の外に出て、心の中で反吐を吐きだしながら月を見上げた。
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と、ここで書いてきたところで考えた。お歳を召しても引退せず店を畳まないのには、いろいろな事情があるのだろうし、それを自慢したくなるのは仕方がないことなのかな。こういう店って、この店界隈の新宿にはたくさんありそうだ。
ただね、私の前に日本酒のお銚子とお猪口を置くのはやめて。肉体的、具体的に受け付けないんだよ。