けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ザ・ビートルズ「モノ・ボックス」:人間味が投じられた絶叫(シャウト)!

ザ・ビートルズ・モノ・ボックス(アンコール・プレス)

ザ・ビートルズ・モノ・ボックス(アンコール・プレス)

私は大人になって「音」にこだわらなくなってきたので、もっぱらiTunesiPod経由で音楽を聴いている*1。しかし、このモノ・ボックスは絶対にCD→アンプ→スピーカーで聴くべき。
iPod(あるいはiTunes)→アンプ→スピーカーもだめ。ゴースト音が、微々たるものであるが耳障り。ガードをかけているのか、あるいはアップル製品の限界か*2
もちろん、CD→アキュフェーズのアンプ→タンノイのスピーカーに載せて聴くべし!とかではない。
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さて、ザ・ビートルズ・モノ・ボックス。全体的にジョン・レノンのヴォーカルが浮き出ている。これはコーラス部分も同様。浮き出ているというか「映えている」。これに驚愕したのはなんといっても1st.アルバム。後述。
このモノ・ボックスは、モノラルゆえに「音圧がすごい!」という評価が大勢を占めているが、それを一番実感したのは、アルバム「ラバー・ソウル」。
このアルバムは、ポップあるいはソフトなアルバムという印象を持っていたのだが、本ボックスのアルバム「ラバー・ソウル」はアルバム全体を通してハードに走りきる。
何度も聴き直したが、その印象は強くなるばかりだった。正直、このアルバムを聴けるだけで本ボックスの価値があると思う(この言葉はあとで繰り返す)。
ちなみにステレオ・ボックスはバラ売りしているが、このモノ・ボックスはバラ売りされていない。そのことがインターネット上で大いに批判されているが「ラバー・ソウル」は是非ともモノラルで聴きたい。
私はモノ・ボックス全体を通じてほとんど外れがなかったのでボックス買いで、非常に満足している。ただし「サージェント・ペパーズ」以降後期の作品については、ステレオヴァージョンの方が良いかもしれない*3
ちなみに本ボックスは所謂「ホワイト・アルバム」で打ち止め。「アビー・ロード」や「レット・イット・ビー」は収録されていない。
私としてはこの辺りのアルバムは、好みではないので別に構わない。と思いながらも、収録されていない二枚のアルバムをステレオ盤で購入した。
アビイ・ロード

アビイ・ロード

感想は本筋に関係ないので割愛。
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さて、1st.アルバム。聴けばわかること。それを書くのは蛇足だと大いに思うが書いてみる。
私の大好きなアルバム。世の中に数あまた存在するアルバムの中で一番好きなアルバムであり、座して聴きながら驚愕した。
まず、タイトル曲「プリーズ・プリーズ・ミー」。

http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20111226/1324881162
ビートルズエアチェックが、中々できなかったので、中学生になってから体験したかな*3。

小学生の時に体験していた。黒いガムのCMのバックで流れていた「プリーズ・プリーズ・ミー」。そのときの鮮烈な体験は、いまだ拭いがたく厳然と残っている*4
さて。まずジョンのハーモニカ。立ちあがりが異常に鮮明かつ透明に響き渡る。立ち上がりに加えてノンビブラートでストレートに伸びる*5
これはステレオバラ売りの1st.と比べるときわめて対照的。「擬似」(と断言してもいいだろう)ステレオ盤では、右スピーカーからヴォーカルとコーラス、左から楽器音が流れてくる*6
その左スピーカーからおどろおどろしく残滓の如く発せられるヴォーカル・エコー。アルバムを冒涜蹂躙しているとさえ思う。そしてハーモニカが戸惑うかのように脆弱に立ちあがる。
ビートルズってエコーを毛嫌いしていたんだぜ。いかにしてエコーを消すかについて注力していた。台無しになっている。
さておき、透明感溢れるハーモニカのバースから引き継がれるジョンのヴォーカル。
ステレオ盤だとコーラス(ポール)が歌詞を間違えたため、最初の「カモン!」をジョンが笑いをこらえて声を出している。これがステレオ盤の売り文句であると一部で言われているが、別に笑いは必要ない。
次。「ゼアズ・ア・プレイス」。あまり有名ではないかもしれないが、隠れた名曲。この曲に関しては、いわずもがなであるが、ジョンとポールのダブル・ヴォーカルが聴きどころ。
既存盤(所謂ブラックボックスとか)だと裏メロディーが抑えつけられている感じだが*7、本ボックスでは均等に扱われている。ビートルズがコーラスバンド*8であることを再認識した。
ダブル・ヴォーカル。ポールのヴォーカルにジョンの「こぶし」の利いた裏メロディーがしっかり乗っていて(ときには「表」を圧するバースもある。)既存楽曲とは別楽曲ではないか、とさえ思えるほど(この部分は誇張が入る)。
最後。「ツイスト・アンド・シャウト」。これが本モノ・ボックスの前人未到の臨界。リードヴァーカルのジョンが、風邪をおして吹き込んだが故に、再現不能なる「シャウト」が可能になったという伝説*9
まさに一世一代、一期一会、一触即発が「発」する吹き込み。言葉にならないけど書いてみる。
まずジョンの絶叫が人間離れしている。それに淡々とかぶるコーラス。次第に盛り上がっていく。2分33秒という短い枠内の楽曲の中で完成され尽くしている。ジョージの凡庸なるギターソロも凡庸なるが故に効果的。変な話だが。
ジョンの「シャウト」。ぶれている*10。おそらく風邪の影響もあったのだろうが、この「ぶれ」が先に述べた再現不能なる吹き込みの一端(あくまで一端)。「ぶれ」が醸し出すきわめて人間的な絶叫。
この楽曲を聴けるだけで本ボックスの価値があると思う。あるいは耳に焼き付けるためだけに。
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剛毅果断。そして妖艶。

*1:クラシック音楽iPodではきつい。音域が広がっているから。

*2:限界というか確信犯、当然の措置だろう。

*3:「サージェント・ペパーズ」のモノラルがものすごい!という熱い感想も巷間溢れているが。

*4:大袈裟のようだが本当。CMの斬新さが理由でもある。

*5:他の曲(たとえば「ラヴ・ミー・ドゥ」)では効果的にブルージーなビブラートを使っている。

*6:1st.を聴いて判断する限り。

*7:楽曲構成では当然だろう。

*8:とりわけ初期の楽曲においては。と付記しておかないとフリークから叩かれるだろう。

*9:付属のライナーノートを読むと事実だったらしい。さらには、気合を入れるためか上半身裸で吹き込んだとも言われる。

*10:とくに「shake it baby now」のバース。