けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 雪降る朝のショート・ストーリー

私は犬ではない。ましてや小飼弾氏が言うところの犬のクソでもない。

しかし、私は雪世界を見ると走り出したくなる。そこで、私は走り出すことにした。特に用事はないのだが、煙草が切りかかってきたのと、毒入り餃子事件の展開を記しているであろう新聞を買いに、白銀の世界に走り出た。雪中行軍というやつではない。

走り出そうと靴紐を締め直したマンションの入り口で、おもいがけず「こんにちわ!!!」の二重奏の声に私の足は雪に捕らわれそうになった。なんのことはない、マンションに居住するチビッコ二人が、楽しそうに雪だるまを作って遊んでいて、楽しさついでかしらんが私に「こんにちわ!!!」の声を発したのだ。

しかし、私はついでかなんだかしらんが、楽しそうなチビッコたちに感動した。それにしても、奴らが遊んでいる場所は狭い。狭すぎる。そこで、隣接地のマンション建設予定地で、現在は莫大な更地になっている場所を解放してやろうと思った。しかし、当然のことながらチェーン・キーで封鎖されている。

部屋から電ノコを持ち出せば、軽々とキーをぶっち斬ることは可能であるが、朝の静けさの中で、ウイイイン!という音でデンノコするのは非常識だと思い、封鎖パネルに蹴りを入れることにした。

最初は軽く。力を抜いたジャブ程度。次。やや力を込めて軸足に重心を載せて蹴った。パネルはパネルのくせして手ごわい。最後に、渾身の右ストレート風味の大蹴りを入れようとした所で、軸足が滑ったので、私は諦めた。

買物を済ませて、再びマンションに戻ったら、さっきのチビッコが「できたんだよ!!!」と、大小二つの雪玉を誇らしげに叩きながら私に声を掛けた。広場を開放できず、肩を落としていた私だが、莞爾と笑い、「おうっ!」と手を挙げて応え、マンションの入り口をくぐった。

振り返ると、チビッコたちは、雪だるまさんの完成の為に、小玉を大玉に載せようと四苦八苦していたが、そこで、手を貸すような野暮な私ではない。玉を作ったのはチビッコたちであり、四苦八苦という困難を解決するのも彼らの楽しい仕事(遊び)のはずだから。

それにしても、チビッコたちが遊んでいた場所はあまりに狭かった・・・。