けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 看板をぶっ壊して大切なことを学んだ。

先日、半地下に店を構える店で飲んだ。以前紹介した「鎌倉さん」が生息している店。恐ろしく照明を落としたバーカウンターが中心。自家製杏仁豆腐がメチャメチャ美味い。というかそれを食するために顔を出している感じ。
さて、そんなアル・カポネ経営のスピークイージーみたいな店で飲んでいると「鎌倉さん」がいて、またまた鎌倉の話になった。私にとって未知なる鎌倉南部の海の話になって、知らず知らずのうちにけっこう飲んだ。
さて、帰ろうかと思い半地下の階段を登っていると最上段の地表ですっ転んでしまった。メガネがひん曲がってしまった、のはいいんだけど(正直、いいことではなかったけど)、ひどいことに店先に出して光放つ看板に抱きつきぶっ壊してしまった・・・。
平謝り。翌日の昼に電話をしてふたたび謝ると同時に補修費用、というか全壊していたので新設費用なんかを相談した。「中古でこれこれくらいすると思うんですよ」。
これこれは、思っていたよりも安かったけれども、けっこうな値段で台所が燎原の火の車になってしまうような金額。頭を抱えた。
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さて、ここまではよくある話(じゃない)。書きたかったのは次。
マスターから連絡「これこれの値段で済んだので、けろやんさんは半分の金額を出してくれたら良いですよ。あんまり気にしないでくださいね」。
金額はいぜん提示されたこれこれの金額の十分の一になっていた。私はすぐに連絡を取って「以前のこれこれに比べると金額がとても少ないので間違っていませんか?」
マスター応えて曰く「いや、買うと高いので店にある折りたたみ椅子を土台にして新しく作りました。電灯は100均で集めましたので安く上がりました」
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カネでなんでも買える、というかなんでも処理できる世界。そんな世界の真っ只中で、あり合わせのものを集めて工夫する人(DIYとか言わないでね)。
私は、自虐や韜晦ではなくて「カネ」の世界にどっぷりと足を踏み込んでいると思う。そんな私とちがって自らの力で再生する人。
彼は私にとても大切なことを教えてくれた。うそではなく涙でひんまがったメガネが曇った。なんだか、自分がとてもちっぽけな人間に思えた。
菓子折と代金にイロをつけた金額(ここでもカネ)を封筒に収めて店を訪問した。休日の日照り真っ盛り。
店は住宅街のど真ん中の閑散にあり、散歩する人々なんかに気が付いてもらうために、土日祝日は昼の2時から開店しているんだってさ*1
で、夜中の3時くらいまで一人で店を切り盛りしている(素敵な奥さんは出産のため実家に戻っている)。
開店準備が整って一息ついた彼は「暑いですねえ。コロナビールでも飲みますか?余計にカネもらったんで御馳走しますよ」私はソフトドリンクを頼もうとしたが「まあ、いいじゃないですか、どうぞ!どうぞ!」
夏の日の午後。真っ盛りの太陽にあぶられた私が飲んだビールは苦かった。しかし、次第に甘みが喉を抜けた。

*1:そこから夜の常連になった客がたくさんいるみたい。