けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ベートーベン交響曲第9番ニ短調Op.125

演奏会に行ってきた。演奏者は、ファラディン・ケルモフ指揮レニングラード国立歌劇場管弦楽団。場所は、東京オペラシティコンサートホール。演目は、ベートーベン「エグモント」序曲と「第九」
私の席は舞台ほぼ正面、前から四列目だった。演奏が始まると、弦楽隊が大きく視界を覆い、菅楽器群はほとんど見えない。しかし、高台に据えられたティンパニは、ばっちりと私に向かってくるような位置であり、一安心した。
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オペラシティ。初台にあるのだけれども、とにかく辿り着くのが難しい。新宿からだと都営新宿線で行くのだけれども、京王線とか京王新線とかが隣接するホームを発着しているので、ナニがナンだかわからない。今回も迷った。
昔、このホールで演奏したことがあるはずなんだけれども、バブルの金を突っ込んだ絢爛豪華なホールに、まったく記憶がなかった。しかし、まあ、本当に金をかけた空間で圧倒されたな。
そんなことはさておき。会場入りしようとしたら、ダフ屋さんが居てびっくり。うむ。会場入りして、莫大なチラシを熱心に仕分けして、「さあ号砲が放たれるのだな!」と思い、無人の舞台を眺めていた。ちょっと、わからないのだけれども、いろいろな思いが去来して、涙が出そうになった。アホか。
演奏開始。序曲エグモントの荘厳な音が、音圧となって幕が開いた。ん?いきなり、アンサンブルが崩壊し始めちゃっているぞ。たとえばエグモントのような曲では、コンサートマスター(今回はコンサートミストレス)が、オーケストラあるいは、1stバイオリンの中でも、ほんのわずかだけ先に音を出すのが定石なんだけれども、それがあまりにも激しく弾み、弦楽器隊が付いていけない、って状態。でも、まあ熱い演奏で堪能できたよ。
さて、「第九」。私が楽しみにしていた二楽章。崩壊しかけていたアンサンブルもコンミスの激しさに周囲が付いていけるようになり、したがってオーケストラ全体が、非常に戦闘的な状態になっていて、私の中で興奮がいや増してきた。
そして、待ち望んでいたティンパニ連打。これは、凄かったぞ。やや乾いた音で、それが抑制された激しさを奥底に秘めているようなそんなティンパニ。そして、ディミニエンド指示さえをも無視して、叩きまくっていた。私は、胸が苦しくなったよ。
そして、第四楽章のコラール。煽るオーケストラの前奏後、バリトン独唱がホールに響き渡る。ん?これまた、なんともひ弱な声量で、腰がカクってなったぞ・・・。だって、譜面を見ながら歌い始めるんだもん。その後、合唱がひとくさり終って、テノールの独唱が始まる。
おお!これは良かった。ふてぶてしい面構えから、朗々と歌が流れ出る。彼は、譜面を片手に持ちながら、会場を睥睨しながら歌を作り出していた。ちなみに、このテノール歌手は、本来、やって来る人の代役として招聘されて来た人。名前は覚えておくと良いよ。ドミトリー・カルポフさん。
そんなこんなで、最後のアッチェルダンドに突入して、ただただ引き摺られるようにしてして終演。まあ、日本人お決まりの「ブラボウ!」も響いていたけれども、私は不思議な虚脱感と、よくわからないけれども「やり終えたな」という気持ちに満ち溢れていた。いや、正直、何もやっていないのだけれども・・・。
楽団員が下がり、観客の多くも退場してから、私は無人の舞台に立ち寄り、テノール歌手の席をしばらく見つめた。いや、射るように睨み付けていた。何か記憶に残そうとしたんだ。
ああ、年末だな、と思った。