- 作者: 竹本健治
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/09/22
- メディア: 文庫
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で、感想文を書いた竹本健治「ゲーム三部作」の最終章。この三部作については、以前も書いたように、随分昔に読んだが、なにもかもが記憶に残っていないという寒い状態だったのだけど、本作「トランプ」のラスト直前だけは、しっかりと覚えていた。ロマンス。
さて、本作をミステリとして考えるならば、「密室物」、「暗号物」、「叙述物」と豪華絢爛な満腹物である。しかし、アンチ・ミステリと考えるならば、それらはすべて虚空に消える泡沫となってしまう。
まず、前者=ミステリと考えた時、その所謂トリックは、すべてが入れ子細工になっている。これは、「暗号」部に顕著であり、「叙述」部に極めて示唆的である。
そして、後者=アンチ・ミステリと考えるならば(「叙述」部の示唆から考えざるを得ないのだが)、人間と世界という隔絶された情況を物語る小説に変容する。
さらに、変容した小説と考えて「ゲーム三部作」を敷衍すると、魅力的な登場人物たちが人形*1であり、彼らが、ゲーム=人間が対峙する世界を駒のように動いているようにも感じられる。
しかし、ここでの人間は、小説というゲームの「盤面」を見つめる読者としての人間であり、現実存在の人間には至らない。三部作を読み終えて、梅干しを入れた梅昆布茶をホッと飲みながら、小説世界を離れるとき、ようやく現実世界に戻って来るという話。
いや、正直、その魔力に封じ込められそうになる小説でした。
■参考
・アンチ・ミステリー論
・衒学的なアンチミステリー
・推理小説(wikipedia)
*1:この表現は、「トランプ殺人事件」の解説でも使われていた、と思う。