けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 伏線回収の妙、そして伏線回収の砂

メモ:下記に引用したエントリがはてなトップに出てきた2012年9月20日に、伏線の妙なる小説をピックアップした。三津田信三について調べるために中断。今回再開アップ。
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伏線の回収にゾクゾクする…日本の小説7選
選んでみた。
1.三津田信三「厭魅の如き憑くもの」

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

伏線回収については、なんといっても三津田信三。この作品ではなかったかもしれないが、同シリーズのどれかが47!もの伏線*1が張り巡らされ、完璧な回収が行われている。「47の伏線」はどこかで見かけたんだけど発掘できなかった。

2.横溝正史悪魔の手毬唄

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

「童謡」殺人物(たとえばマザーグース物とか)。このジャンルについては、なんといって動機付けの妙が勝敗を決する。
童謡物は連続殺人*2が付随していることがほとんどだが、なぜに童謡が提示されるのかが読みどころ。本作品は、みごとに動機を回収している。ちょっと「伏線の回収」からは外れちゃうかな?

3.坂口安吾「不連続殺人事件」
たった一発の伏線が読者にカタルシスな世界に導く作品。

4.原�咸「愚か者死すべし」
こちらは、たった一発の銃声が伏線となり、読者を混迷*3の世界に導く作品。
けろやん。焼き芋:原�咸「愚か者死すべし」〜ハードボイルドの極致を堪能しようぜ!
で、この人どこに行ったの?

5.有栖川有栖「双頭の悪魔」

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

著者屈指の傑作であり、日本ミステリ世界においても他の追随を許さない作品。金字塔。なにしろ「読者への挑戦」が3本入っている。
すなわち1本ごとに伏線をめぐらせ、それを回収するという過程で少なくとも3つの精緻な伏線と回収が提示される。
もちろん伏線はこれだけではない。3本の「読者への挑戦」が伏線となり、その回収されたとき本を閉じてしまうのがもったいなくなる名作。ちなみに「青春モノ」の趣がある。とにもかくにも本格推理である。これ、どこかで書いた。

6.バークレー「第二の銃声」

第二の銃声 世界探偵小説全集 2

第二の銃声 世界探偵小説全集 2

海外物。これは伏線とその回収が見事なのだけど、話はそこから始まるという異質な作品。すなわち伏線の回収の後に・・・。ネタバレにならないように書くと*4、「伏線回収に納得したら負けだと思ってる」がキーポイント

7.麻耶雄嵩「翼ある闇」

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

数あわせで紹介するわけではないけれども、直球の伏線回収という意味では、やや変則気味。もちろん伏線が敷かれ、その回収が行われるのだが、本作品の心眼は終局における恐ろしいまでの・・・。
すなわち、伏線回収に主眼を置いた作品ではない(と思う)けれども、衒学的な伏線でミッシングリンクが形成される。読者たる私たちは、闇が翼を広げるように想像力が拡充される作品。
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と、イロエロと紹介してきたけれども「伏線回収」は、作品を読む人にとっては非常に魅力的な「素材」であることはたしか。
しかし、ここまで紹介した作品の卓袱台をひっくり返すわけではないが、個人的には伏線の回収それ自体にはあまり魅力を感じない。
すなわちミステリの醍醐味はそれだけではない。本音を投じるならば、極上の伏線回収モノについては、極上の伏線回収が必須であると思っている。
すなわち伏線回収に主眼を置いてカタルシスを得られる作品は稀であると思っている。
私論であるが、プロットの妙あるいは勢いであるとか、作品の舞台あるいは雰囲気、これらが作品に寄与して、はじめて伏線モノ」が生きると思う。
上記紹介作品から選ぶとすると「2、5,6」が伏線回収モノの傑作であることはもちろんのこと、他の要因が作品世界を昇華させたものであると思う。

*1:47はおそらく正しいけれども、違うかもしれない。

*2:それぞれの被害者に一つながりの童謡がリンクされている。

*3:正しくは回収されたときに「混迷」を知らされ驚天動地に陥る。

*4:ネタバレになっちゃうかな・・・。