けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 三津田信三「首無の如き祟るもの」(原書房)〜首斬りの考察

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

秘守一族なる三家が息づく山奥の村で、繰り広げられる首斬り連続殺人事件の話。村の生業は炭焼きと養蚕であり、そこから示唆されるように第一の事件は、第二次世界大戦前に発生したものである。そして、事件は、不可解な謎を残し、未解決のまま戦後を迎える。

本筋には関係ないけれども、この未解決事件を通して向き合う戦地に赴く駐在と村に残るもう一人の駐在の別れの場面。この辺りは、上手いなあ。

さて、終戦後、第二の事件が発生する。それは、連続殺人事件でもあり、いずれも「首斬り」死体が残される。何故、首は斬られて持ち去られたのか?そして、登場人物の一人が、J.D.カー「三つの棺」の"密室講義"ならぬ、"首斬りの分類"を語る。

首切りの分類。これについては、他書において既出の分類も含まれているが、民俗学的な考察も含まれており、興味深い。民俗学的といえば、本書は「祟りや怪異を人々がどのように捉えるか?あるいは捉えたか?」という、物の怪の考察におけるテーゼ*1が、謎解きの基軸になっており、民俗学に興味がある方にもお勧め。

話が逸れたが、本書は密室物のミステリでもある。しかし、なによりも首無しのホワイダニットは、凝りに凝った構成で最後(?)の謎解きには驚く。難点をあげれば、「最後(?)」と書いたが、最後の"揺らし"的謎解きは抜きにして、ストレートに結んでも良かったのでは?と思う。あと、町の殺人鬼の話が、どう本筋に関係があるのか分からない。

と、難点をあげたが、本年読んだ本格ミステリの中では、三本指に入る本。

なお、奥多摩という舞台設定(架空)であり、爪生卓造「檜原村紀聞」(東京書籍)が参考文献として掲げられているのだが、滅法読み返したくなった。

檜原村紀聞―その風土と人間 (平凡社ライブラリー)

檜原村紀聞―その風土と人間 (平凡社ライブラリー)

おお、絶版かと思っていたけれども、試しにAmazonしてみたら版元が替わりながらも販売されているのか!

*1:というと大袈裟かな。