読んだ
- 作者: ディック・フランシス,フェリックス・フランシス,北野 寿美枝
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/05
- メディア: 文庫
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http://homepage1.nifty.com/PegasusSquare/dick04.html
と、思ったんだけど、終盤は予定調和なジュブナイルっぽくなってしまい、残念。横溝正史「八つ墓村」を思い出した。これ、おどろおどろしい怪奇趣味の物語だと思われがちだけど、実は上質なジュブナイルのお話だぞ*1。
さて、今回の主人公はブックメーカー。本シリーズ、過去には、ジョッキーや厩務員など競馬シリーズならではの主人公が活躍している。
しかし、中には、会計士、鬱病のエージェント、そしてレストランのシェフ(!)なんてのが、主人公に列せられ、どうやって料理するのだろう?みたいな魅力的な主人公も輩出してきた。それはともかく、今まで、いかなる理由でブックメーカーにスポットを当ててこなかったのが不思議なくらい。
http://kurosaki-yowa.seesaa.net/article/39640665.html
本作。厳密には階級(クラス)が、通奏低音として陰鬱に鳴り響いているわけではない。しかし、階級「格差」以上に悩まされる主人公の哀切が全編を貫いている。哀切あるところにハードボイルドが生まれる、というのは私の牽強付会。
http://keroyan.exblog.jp/1061062
それにしても詰め込みすぎの感は否めない。謎の殺人者あり、託されたリュックサックあり、さらには過去の情景の再現、そして家族の話も大きな意味を持っている。もちろん、ブックメーカーの仕事も展開されており、さらにはサラリーマン的な揉め事も風情よく顔を出している(私はここを一番おもしろく読んだ)。
このように詰め込みすぎの物語であり、各所に張り巡らされた伏線の回収は非常なる困難を極めている。したがって、前述のように、ジュブナイルという形式を結語において持ちいらざるを得なかったことは、想像にかたくない。しかし、少年探偵団までも登場して、これは江戸川乱歩の怪人二十面相ではないか?と懐疑の念を抱き、愛読者である私は息苦しくなった。
まあ、非難めいたことばかり書いてきたけれども、前半部分の硬質性は、比類なき物語である。文庫本落ちもしているので、ぜひ一読してみてください。
Amazonで原書も売っていますが、海外からの輸入ものなので、到着までに2〜4週間かかるんだってさ。
Even Money (A Dick Francis Novel)
- 作者: Dick Francis,Felix Francis
- 出版社/メーカー: G.P. Putnam's Sons
- 発売日: 2010/08/03
- メディア: ペーパーバック
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*1:洞窟の冒険、財宝探索あり、そしてロマンスもある。