ポール・アルテ。ミステリ好きの巷間では、「狂人の部屋」(asin:4150018014)が注目されているでしょうが、当該本は未読。でも手に入れてあるから、後で読みます。
今回は、ちょっと古いけれども、最近読了したこちらの感想文
- 作者: ポールアルテ,平岡敦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08/15
- メディア: 新書
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本作を一言で記すならば、"アルザス・ロレーヌ地方の悲劇"に尽きる。
犠牲となった密室殺人事件の被害者の少女が、時を経て再び現われる。奇怪な発端。主人公は、生まれ育った村を離れ、ロンドンでシェフの仕事に就き平和に暮らしていたが、知らせを受けて、アルザスの村に戻る。戻るまでが、とても長い・・・。
で、戻る前に探偵役のツイスト博士が登場して、主人公の口から過去の事件が語られる。ここで、過去の事件の犯人は目星がついてしまう。そのトリックも。いや、憚りながら私にも分ってしまった。
そして、ロンドンでロマンスを楽しみ、名残惜しくも村に向かうと、村では変死事件が発生する。過去の主要な登場人物が、ツイスト博士を囲み当時の状況を語る。「当時の状況」は、ロンドンで語られた当時の状況ではないのが味噌。
読者は、その味噌を噛み締め、あるいは犯人のミスディレクションを感じながら、過去の事件の謎解きに立ち会うことになる。フーダニットというよりも、ホワイダニット。禁じ手と個人的には思う手法には納得がいかない点もあるのだが。
とまあ、ミステリとしては、大したものではないと無責任な読者の私は思うが、ラストは感動的。引用してみよう。ネタバレになるかもしれないので、反転させて読んでください。
憶えているかい?本当にいい結婚生活だった。三十年間、幸せそのものだったよ。(略)けれども今夜、わたしは呼び声に答えるだろう。いっしょに行くよ・・・(略)