- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 出版芸術社
- 発売日: 2006/12/01
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著者、横溝44歳、畢生の大作である。いや、"再生・再起"の狼煙である。この後、「蝶々殺人事件」(「本陣」と並行して執筆)、「獄門島」へと横溝先生の疾走は始まる。「犬神家の一族」に端を発する"横溝ブーム"は、影も形も見えやしない。私の中では、世紀の傑作「獄門島」に至る習作という位置付けが、本作品「本陣殺人事件」である。
本陣殺人事件。見方によっては、悲しい産湯に浸かり、悲しい産衣を着せられた作品である、とも言える。悲しい産湯とは、すなわち、天皇陛下の玉音放送を機に生れ落ちた作品であるという意味。いや、逆に考えれば、来たりし平和の世に表現された平和の福音書なのかもしれない。このあたりのことについては、近いうちに書きましょう。
悲しい産衣。これは、「紙と木で作られた日本家屋において密室殺人なんて不可能だ!」ということを覆した記念碑的な作品と称されること。これは、ミステリファンの常套句であり、常套句を常套句として咀嚼した上で、「常套句なんだ!」と叫ぶならばよい。しかし、本作について語られる際の枕詞が「紙と木が云々」だけならば、本作に対する侮蔑である。
本陣殺人事件。この作品の肝は、「生涯の仇敵」にあるのだよ。この「生涯の仇敵」が無かったならば、お茶目な「木と紙locked room case」という日本文化的縮み文化の発露に過ぎなかったかも知れない。しかし、「生涯の仇敵」があったからこそ*1、21世紀の今でも、連綿と読み継がれているのだと思う。で、「生涯の仇敵」とは、なんぞや?ということは、これまた近いうちに書きましょう。
さて、年末恒例のミステリランキング本なんかで、大層な注目を浴びている
- 作者: ウィリアムブリテン,森英俊,William Brittain
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■参考:横溝正史(wikipedia)
社会派ミステリーの台頭で一時は忘れられた存在となっていたが1968年、講談社の『週刊少年マガジン』誌上で『八つ墓村』が漫画化・連載(作画:影丸穣也)されたことを契機として注目が集まる。ミステリとホラーを融合させたキワ物的な扱いであったが、映画産業への参入を狙っていた角川春樹はこのインパクトの強さを強調、自ら陣頭指揮をとって角川映画の柱とする。結果、『犬神家の一族』を皮切りとした石坂浩二主演による映画化、古谷一行主演による毎日放送でのドラマ化により、推理小説ファン以外にも広く知られるようになる。作品のほとんどを文庫化した角川はブームに満足はせず、更なる横溝ワールドの発展を目指す。
(太字化は引用者)
*1:正確には"追加"された。