亀田興毅について。彼のレーゾン・デートルは、パフォーマンスであった。と、難しく書くと自分でも分らなくなるので、簡単に書くと、パフォーマンスを旗印としていたボクサーだった、と書き換えよう。彼が、そのキャラクター性を喪失した時、新たな物語が始まる、かもしれないということを考えてみた。
「疑惑の判定」を沸点として、湧き上がったバッシングの嵐。その過程には、「再戦延期」という燃料投下もあった。彼は、奈落の底を垣間見たに違いない。そこで、彼はキャラクターを捨て去った。捨て去るを得なかった。すなわち、パフォーマンス・ボクサーという「安住の地」から、逃走せざるを得なかったし、彼は決断したのだろう。
さて、彼が棲んでいた安住の地とは、なんだろうか?それは、作られたパフォーマンス*1を演じて、選ばれた対戦相手*2と闘うだけで許されていた場所である。
もちろん、その地で生きること、闘うことについて、亀田本人が心の底から望んでいたとは思わない。しかし、外から彼のスタイルを眺めれば、安住の地は厳然と存在し、興行マーケティングとしては、成功していたのは事実であろう。これについては、詳しくは述べないが、極めてプリミティブな手法である。
彼は、2006年12月20日の「初防衛戦」で、楽園からの退出を余儀なくされた。すなわち、勝つことに徹せざるを得ない荒野に放り出されたのである。言葉を変えれば、20歳という境界で、「疑惑の判定」という契機はあったにせよ、荒野に自ら飛び出したのだ。
引き返すことは出来ない。これからは、真のチャンピオンとして、選ばれた対戦相手のみならず、世界のボクサーを敵に回したのだ。「疑惑の判定」という予期せぬ逆風状況という壁を一つ乗り越えたのかも知れない。しかし、これからも幾重にも壁は存在する。
彼の顔から時折覗く白い歯。私は、彼の純真さの表徴だと思いながら、眺めている。その彼が、純真さを忘れずに、一つ一つ壁を乗り越えて、世界に冠たるボクサー亀田興毅として、成長していくことを願って止まない。成長譚という物語のエピソードが幕を下ろし、物語の本章が始まるのかも知れない。
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もう一人の挑戦。
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