けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ワーキングプアにもなれなくて・・・

仮定の話である。語り物の範疇と考えていただいても構わない。

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とある四十路間近の男がいる。グラウンドの裏手にあるワンルームに棲息し、昼間はネット三昧で明け暮れ、黄昏時に、世間を照らす光から逃れるがごとく、ようよう外界の空気に触れる。重たい身体を支える足の向かう先は、脂ぎったラーメン屋、あるいはぎっとりとした焼肉屋であろうか。肉を喰らう豚。

故郷からの仕送りが届いた直後は、奮発して風俗店の暖簾をくぐるかもしれない。店の一室で、垢染みた衣服を脱ぎ捨てて裸体を曝す。一時ばかり、衣服に染み込んだ幾日分かの体臭の堆積は薄れる。刹那的無垢。

しかし、身体から湧き出す臭いは、次の瞬間に狭い部屋を包み込むだろう。それ以上に、無為の日々を送ることで、いつのまにか自らのものになってしまった「腐敗」は重たく、対峙する人間は、一瞬のまなざしの交差で、それを見抜いてしまう。表情には出さず、心中で哂う。知らぬは我が身のみである。

店を出た彼は、たるみきったラーメン腹を抱えながら、上空を眺めるかもしれない。しかし、ネオン光の乱舞に遮られ、輝く星々は、見えない。彼の心は、故郷の母が送ってくれた仕送りのことに向かう。ああ、詰まらぬことに費やしてしまったなあ。

一瞬ばかりの反省後。彼の心は、どうすることもできない現状に突き当たり、そこから湧き上がる自らを覆う生活に思いを馳せ、そして悔しさに満ち溢れる。悔し涙は流さない。それが矜持であるからではなく、落涙に至る感情が既に雲散しているのだろう。

安住の地である薄汚い部屋に帰ると、彼は、「どうしてこうなってしまったのだろうか?」と嘆息を吐きながら、故郷からの仕送りで手に入れたパソコンに対座して、「殺意が湧くのだが」などと力強く書き込む。彼にとって、ネットの中は、桃源郷である。可視可能である不健康な肢体は、外部から対象化されることなく、内部のコンプレックスは深奥に秘匿する。無意識の所作である。

彼は、飛べる豚になれるのだろうか?

自明なのは、仕送りの豚は、ワーキングプアにはなれないということだろう。

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そんな彼。たまには、仕送りをしてくれる親のもとに顔をだしてやれよ。仕送りでチケットを買うことに恥じる羞恥心は、既に持ち合わせていないだろうから。