一気呵成に読了。非常に読みやすいのは、登場人物が少ないからか、プロットが惹きつけてやまないからか。よもや、1971年刊行(翻訳は2009年)という古臭さが問題になることもない。
- 作者: D・M・ディヴァイン,中村有希
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/09/30
- メディア: 文庫
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初読著者の作品であるが、帯に吸い寄せられた。
読んでみると、まったく期待を裏切らない快作だった。つけ加えるなら「ハートウォーミングな家族愛の物語」でもある。
本格ミステリ。最後の最後まで、真っ向勝負のフーダニットである。どんでん返しの後の、大どんでん返しが堪能できる。そして、謎を解きほぐすのは、名探偵ではなく、過程の些事に煩わされて、心理的に追い詰められている主婦。
ええとだね、一体なんて名探偵の設定だ!と思うなかれ。これが、読者にもストレスを与えながら、いい味を出汁てくるのだ。
さて、家族愛の物語。妻と別居するに至っている警部の視点を引用してみよう。
サラ・ケインは何もしなかったけれども、彼女は自分自身を例にあげて、彼のジレンマに答えを与えてくれたのだった。一度、責任を負うと決めたなら、予想以上に重たかったからといって投げ捨てるものではない。良心というものを持ち合わせているのならば。
このような述懐が、事件の大団円が迫る中で投じられるのだ。一体、なんの物語なんだよ!いや、本格ミステリなんだ。
そして、物語の最後は、次の一文で締めくくられる。
サラは微笑み返した。人生を、続けていかなくちゃ。
家族とは何か?を考えさせられる物語であり、本格ミステリファンならずとも、年末・年始の休みに読んでみたらいかがであろうか。