- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/12/28
- メディア: 単行本
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読了後の感想は、「これはミステリじゃないだろ!」。というもの。しかし、形式的には、A・バークリーの傑作「第二の銃声」、あるいは法月倫太郎「頼子のために」等に類似性を見出すことが可能である。
すなわち、犯罪状況を記したモノ(例えば日記)内部に存在する謎を解決する過程が物語となり、私たち読者はその物語を読むという構成。うーん、分かりにくいなあ。フィクション中のフィクション。すなわち、メタ・フィクションという形であり、それは、とりわけミステリ小説において、奇を衒った「物語構成」ではない。
本作品もそのような伝統的手法でのミステリである、わけではない。なぜか?というと答えは単純明快。読み終えてはじめて、上述のメタ・フィクションにカテゴライズすることができるのだ。逆に言えば、読み終えなければカテゴライズできない。
ミステリ小説というジャンルにおいて、カテゴライズは安定したものであり、読者を安心させる。例えば、事件が発生するという道標によって、読者はミステリとして認識する。たとえ、冒頭の謎が恬淡と語られるにしても、事件の発生は大きな導入部となる。それは上述メタ・フィクションにおいても例外ではなく、読者が推理すべき「事件の発生」として、作者の側から提示される、のが通例である。