けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 三津田信三「山魔の如き嗤うもの」(原書房)〜ある意味フーダニット

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

一息に読了。冒頭に掲げられた登場人物表を見て、「うわ!人物多過ぎて読みにくそうだなぁ・・・」と思ったのだけど、気にならなかった。

本作は、

http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20071223/1198368097

で書いた本で、一躍、脚光を浴びた著者の書き下ろしで、著者としては大きなプレッシャーがあったと思う。分類すると、「童歌連続殺人」モノ。ということで、怪異が全篇を覆い尽くしているのは定石としても、密室も絡めたり、盛りだくさん。

しかし、本作の肝は、なんといっても伏線回収の凄まじさ。「伏線を回収する」ということは、伏線を散りばめるということが前提で(当たり前だけど)、その辺りの大胆さに驚いた。

まあ、驚き、恍惚感というような感情は、伏線が回収された、すなわち、事件が終わって、本を閉じた時なんだけど。次作を読むときは、目を皿のようにして読もう。

あと、「童歌」モノにありがちな動機が強引という面もクリアしている。異質な被害者に対する動機は、特筆に価する。ネタバレだから書けないけれど。そして、被害者の事件前の不可解な行動も蓋を開けたら、極めて自然なものであり、「なるほどね!」って膝を打った。

難点は、基礎となる大仕掛けが、どうも現実性に欠けているように思えるところ。

なにはともあれ、E・クイーンばりの「ある意味」フーダニットも、伏線を辿ると楽しめるので、お勧めのミステリです。

参考:

棒日記V -I will carry on-:山魔の如き嗤うもの 三津田信三