先日逝去された西村賢太。同氏の作品については、2021(令和3)年初に立て続けに読んだ。
しかし、そのほとんどについて、感想を書いていないなど記録の不備が大きく、いまとなっては残念だ。
まっ、また読み直して、そのときの感想を書いていけばいいんだよね!
と、問題解決したところで、比較的まとまって書いてあった作品を紹介していこう。
読了日:2021年1月24日(日)
読書経緯:所蔵
書誌情報:2010年1月7日 単行本刊行
<感想>
2000(平成12)年から2009(平成21)年までに書かれた随筆を集めた作品集。筆者の西村氏は、2011(平成23)年1月17日に芥川賞を受賞しているので、その受賞前の作品が編まれていることになる。ちなみに親本の出版も芥川賞受賞前(上記書誌情報参照)。
収録作品のそのほとんどが、藤澤清造にまつわるものであり、筆者の原点とも呼べる思いのたけが放じられている。このような素材を料理しものすには、小説ではなく随筆のほうが適当であることは言を俟たない。たとえ小説が「私小説」であろうと。
それにしても芥川賞という「大賞」を獲る以前に、モチーフをほぼ藤澤清造のみに絞った随筆集が出版されたとは。言葉は悪いが芥川賞受賞バブル前の西村のほとばしる才気は天を突いていたと思う。
長くなったが、最後に。西村賢太は私小説作家と呼称されるが(またその前後に余計な装飾がついたりもするが)、本作品集を読むと、彼の根っこはあくまでも藤澤清造への敬愛、私淑にあり、小説創作活動は二の次であったろうということがわかる。
このあたりのロジックは難しいのだが、いま天国にいる西村賢太がやり残したことは、小説を書いていくこと、そしてそれ以上に、藤澤清造の生きた証としての彼の全七巻の全集を編むことだったと、私は思うのだ。
(以上)
評価:5/5