けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 南極大陸と昭和三十年代

テレビをほとんど観なくなった私だけれども、今晩から始まるドラマ「南極大陸」は、楽しみにしている。
日曜劇場『南極大陸』 | TBSテレビ
俳優としての木村拓哉って、どんなドラマでも決まってしまった形があって、それがいまひとつ突き抜けられない要素でもあると思うけれども、私はそのあたりが好きだったりするな。
それはさておき、南極大陸といえば、この本。

南極越冬記 (岩波新書 青版)

南極越冬記 (岩波新書 青版)

1956年秋から1957年春までの第一次南極観測隊の南極越冬記録。極地での研究が目的ではあったけれども、事実上、極地で生きることができるのか?という、いわば人体実験と化した越冬記録。
南極の一基地内で、肉体的苦痛に加えて、どこにも逃げることのできない閉鎖空間における精神的苦悩も赤裸々に描き出している。
所謂「南極一号」についても記されており、「ここまで書くか?」という嫌悪に襲われながらも、記録者としての頑なな姿勢が感じられる。(興味がある人は「wiki 南極一号」で検索してみてください。ただ気分が悪くなるかもしれないので、要注意です!!)。
さて、世相史としても本作は、重要な位置付けになっている。敗戦の焼け跡から這い上がり、経済白書に「もはや戦後ではない」と感傷的に謳われたのは、くしくも第一次南極隊の活動開始と同年である1956年。その後、岩波新書から世に問われた本作は、1958年のベストセラーになっている。
いわば、世界の一員として世界に出て行った「非日常たる越冬隊」に対して、世界に追いつかんと汗水を垂らして働く「日常の人々」が共感を寄せたことが伺える。ヒットした「ALWAYS−三丁目の夕日」が、昭和三十年代の市井(あるいは日常)を描いているのも興味深い。
http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20110921/1316605414
なにはともあれ、現在では忘れ去られてしまったかのような生き生きとした時代を羨ましく感じるなあ。

参考:
1958年 ベストセラー10 (昭和33年)
運命の船「宗谷」と南極越冬隊の奇跡