- 作者: 多島斗志之
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/05/27
- メディア: 文庫
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最初に引用。
男はゆり子の胸に貼りついていた十五年間の謎を、糊をはがすようにして解いた。
最初に引用したのは、本作品の最初の一行。ありきたりで、ベタな書き出しでしょう?ところが、この一文がダブル・ミーニングとなり、物語はミステリであると同時に、もう一つの要素を秘めているのです。この辺りは、ネタバレになりかねないので、ぼかして書くと成長譚ということでしょうか?
舞台は瀬戸内海の島。そうすると、コッテリしたミステリ・マニアの方々は、禍々しい「嵐の山荘モノ」を連想されるかもしれません。が、半分当たりで、半分外れ。この当たりであり、また外れであるシチュエーション、というのも本作品の魅力。まったく上手いなあ(いや、私ではなく著者が、ですよ・・・)。
さて、「嵐の山荘モノ」。人の出入りが不可能な状況下で事件が起こり、犯人は内部に潜んでいて、しかも外部に助けを求めることもできない、というサスペンス付きのミステリです。雪に閉ざされた山荘から、絶海の孤島、炎に包まれた屋敷等等。しかし、本作品は、心の中の「嵐の山荘モノ」とも言うべき優れモノなのです。
サスペンスと言えば、主人公のゆり子が、さまざまなミスディレクション(?)に翻弄されて、人間不信に陥っていく様子。これは、ホラーとしても昇華できるネタです。ただし、本作では、ホラーに向かわず、「糊をはがすようにして解い」ていく話。
正直、ミステリというジャンルに捉われずに、物語として読める本です。
付記
今年、多島斗志之氏の著作は、たくさん読んだ。始まりは、この本かな。
その後、
- 作者: 多島斗志之
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- 作者: 多島斗志之
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