けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

  多島斗志之「不思議島」〜旅立とうかしら?

不思議島 (創元推理文庫)

不思議島 (創元推理文庫)

今年読んだ本の中で一番か?と問われると、答えに窮しますが、おそらく一番楽しめた本。といっても、奥付を見ると2006年5月31日であり、遅ればせながら読んだんですけどね。で、読んだのが、今年の九月頃。なので、読み返して、しっかりとした感想文を書こうかな?とも思ったのだけど、積読本の山裾が広がっているので、思い出しながら書きましょう。

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最初に引用。

男はゆり子の胸に貼りついていた十五年間の謎を、糊をはがすようにして解いた。

最初に引用したのは、本作品の最初の一行。ありきたりで、ベタな書き出しでしょう?ところが、この一文がダブル・ミーニングとなり、物語はミステリであると同時に、もう一つの要素を秘めているのです。この辺りは、ネタバレになりかねないので、ぼかして書くと成長譚ということでしょうか?

舞台は瀬戸内海の島。そうすると、コッテリしたミステリ・マニアの方々は、禍々しい「嵐の山荘モノ」を連想されるかもしれません。が、半分当たりで、半分外れ。この当たりであり、また外れであるシチュエーション、というのも本作品の魅力。まったく上手いなあ(いや、私ではなく著者が、ですよ・・・)。

さて、「嵐の山荘モノ」。人の出入りが不可能な状況下で事件が起こり、犯人は内部に潜んでいて、しかも外部に助けを求めることもできない、というサスペンス付きのミステリです。雪に閉ざされた山荘から、絶海の孤島、炎に包まれた屋敷等等。しかし、本作品は、心の中の「嵐の山荘モノ」とも言うべき優れモノなのです。

サスペンスと言えば、主人公のゆり子が、さまざまなミスディレクション(?)に翻弄されて、人間不信に陥っていく様子。これは、ホラーとしても昇華できるネタです。ただし、本作では、ホラーに向かわず、「糊をはがすようにして解い」ていく話。

正直、ミステリというジャンルに捉われずに、物語として読める本です。

付記

今年、多島斗志之氏の著作は、たくさん読んだ。始まりは、この本かな。

http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20071024/1193178420

その後、

二島縁起 (創元推理文庫)

二島縁起 (創元推理文庫)

は、結構面白く読んだのだけど、同シリーズの海上タクシー<ガル3号>備忘録 (創元推理文庫)は、どうもすっきりしなかったな。この間、本屋で、
海賊モア船長の遍歴 (中公文庫)

海賊モア船長の遍歴 (中公文庫)

を見かけたけど(再刊モノかな?)どうなのかな?