けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 去りゆく者、悲劇ではなく悲しみ

私が居ついた飲み屋は潰れていく、というジンクスがある。しっかりと数えていないけれども、少なくとも7軒は海底深くに消えていった。消えゆく店を見取ったのは4軒くらいかな。
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まずは坂の上にオアシスのようにたたずむ店。正直、つまみは美味しくなかったのだけれども、オアシスに惹かれていった。店にいて切り盛りする女性は独身だと思っていたけれども連れ合いがいた。いや、べつにショックではなかった。
次。駅の改札を抜けて階段を上がり右手に存する店。絶好調の位置取りだと思うのだけれども辛かったらしい。愛想の良い店長の奥さんが子供を生むために産休をとったら途端に客が退いた。
私は蒸し焼き鳥の料理だけを食っていたのだけど美味かった。そして店主は焼酎の卸しに出かけて、二時間並んで希少な焼酎を手に入れるような熱意のある人だった。百年の孤独を原価で売ってくれたなあ。
大学生の女の子が二人居て、一人は高校推薦で大学に入学したけれども、卒業と同時にファッション関係の専門学校だかなんだかに飛んでいった。まったく一文字たりとも微動だにしないマイミク。
わからないけれども、彼女の高校からは推薦入学はなくなっただろうなあ、と別にどうでもよいことを思った。そのあたりの事情を知っている妖怪みたいな店のおばちゃんに聞いたら「あれは、有名な演歌歌手の弟がやっていたんだよ」だってさ。
次。私がパトロンをやっていた演劇関係の女性がアルバイトをしていた店。まあ、わたしは彼女の出る舞台のチケットを一枚ずつ買っていた程度のパトロンではなくパットンみたいな。
彼女の舞台に何回か行ったのだけれども、エキストラで出ていた舞台がやや楽しかった。その後は、3部作の3番目の舞台で4時間のロングランでえらいことになっていた。
彼女の最後はボクシングと風俗の町たる赤羽でコラボレーションというかな?歌を歌っていた。ぜんぜん知らなかったけれども「エール」という曲。このときはすげえ疲れた。
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四年ぶりに顔を出した店。刺身が、これまで食った中でベラボウに美味く、正直、量が多くて辟易してはいたのだけどとにかく美味かった。わたしは小食なので食べる人は美味しく満腹なんじゃないかな?
四年ぶり。雇われ店長の一人がムカついていた。バイト君をこき使って自分は客と話すばかり。それが店長の役目だとも思うけれども、いくらなんでもなあ、って思っていた。
私の好きそうな焼酎を選んで買ってきてくれて「これはどうですか?」とかやっていて、純個人的には楽しかったんだけど。
で、4年ぶりに再訪したら、そいつは店のオーナーに「おまえは言われたことしかしない。サラリーマンになった方が良い!」ってな感じで3ヶ月でクビになったそうな。
4年ぶり。店のオーナーさんは私のことを覚えていて、バイト君の一人もしっかりと覚えていた。びっくり。
彼は、自分で店をやりたい!とのことで、この店を卒業して別の店で修行します、みたいなことを言っていた。人の顔を覚えていることが、飲食の仕事では大きな才能だと思うので、がんばれ!まあ、もっと複雑な世界で、しっかりと覚えているツワモノの女性もいるけれども。
4年ぶり。一ヶ月くらいプラプラと飲みに行ったりしたのだけれども、どうもオーナーさんが亡くなったらしい。片山さつきと同級生で、大学受験の模試を受けたら必ずさつきが一番を獲っていて、なんだこれは!とかよく言っていたな。
甲子園に出場した清峰高校はすごかったな!とか言っていた。私も高校野球ファンなので清峰高校のことは忘れられない。過疎の村から甲子園に出場して、村民の3分の2が村を離れるので、空き巣防止のために警察が張り切っていたとか。懐かしい話で盛り上がったなあ。
町の噂では。糖尿病で亡くなったらしい。
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とても悲劇とは言えない。悲しみ。