けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 世俗から逃れた果てに

物置と化している独り暮らしをしていた部屋に、用事があって行き、本棚とかを漁ってみた。魅力的な本やらなにやらがたくさんあった。ゾラ「金」とか、岡田喜秋「山村を歩く」とかね。
ついでに、押入れに放り込んでいる段ボール箱に、これまた放り込んでいる本を漁ってみた。で、出てきた。

遥かなるマッキンリー―植村直己の愛と冒険

遥かなるマッキンリー―植村直己の愛と冒険

マッキンリーで遭難した植村直己をなんとか救い出そうとした明大山岳部OBから見たマッキンリーであり、植村直己であったりする。
植村直己。自著を数多く書いている。例えば、
新装版 青春を山に賭けて (文春文庫)

新装版 青春を山に賭けて (文春文庫)

なんかに魅せられた人々は数多くいるだろう。山岳の環境問題に取り組んでいる野口健なんかもそのひとり。
私の推するのは、読んでいると、骨身に染みるよ。まじで。
で、「遙かなるマッキンリー」。購入したのは、表紙の裏に記載した日付によると1998年9月6日。友人と高田馬場BigBox前で待ち合わせたのだけれども、やつが中々やってこなくて、Box内の古本市をうろうろして購入した記憶がある。
ということは、どうでもよくて、本書は植村直己の自著に書かれなかった、あるいは書くことができなかった苦悩が凝縮されている。
日本人チーム初のエベレスト登頂者となり(初は松浦輝夫、先鋒を登っていた植村が登頂直前に「松浦さんどうぞ」と言って、譲りながらも、松浦の提案で、最終的には肩を組んで登った(らしい))、ある種の英雄、あるいは道化となりながらも、生活のために数々の講演会、握手会などのイベントをこなして苦しんでいた様子が克明に記されている。
そうした世俗の垢の中、そして尽くせぬ南極への憧憬を抱えながら、植村は逃げるように、厳冬期マッキンリーに挑戦し数々の謎を残して消息を絶った。なんというかね、壮絶な思いが読者に迫りくるよ。
私の持っている同書はボロンボロンだけれども、これからも小脇に抱えて生活していくのだろう。あるいは小脇を眺めつつ生きて生きたいと思う。