けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 船戸与一「夜のオデッセイア」(徳間書店):ジャブ一発

夜のオデッセイア

夜のオデッセイア

珍客万来のロードー・ムービー小説。

http://www.geocities.com/Tokyo/9770/ya_list1.htm

を見ると、1981年刊行ということで、南米三部作前の最初期船戸作品ですね。

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とりあえず、書き出しが格好良すぎ。

アブサンの海を漂いながら、おれは女のしなやかな白い手が黒い男の膝の上に置かれるのをただ黙って眺めていた。

まあ、これは何のことかというと、次の日に試合を控えた黒人ボクサーに、敵陣営の女性刺客が篭絡を仕掛ける場面の描写。で、この「篭絡」は、見ているオレが過去に味わい、坂を転げ落ちて行くきっかけにもなったやり口なんだけど、オレは「ただ黙って眺めていた」というわけ。この書き出しの一文(とあと少し)で、主人公のおれの現在の性格が読者の頭に刷り込まれる。

その他、冒頭に述べた「珍客」が多々登場するのだが、それぞれについて、過去のトラウマを背負わせ、オデッセイア(車の名前でもある)を走らせる。目的は、隠された2000万ドルを探せ。カネカネ。

カネに辿り着くまでに、紆余曲折、波乱万丈が展開されるのだが、本作の醍醐味は、ヤサグレた珍客たちが、波乱曲折を経て、ヤサグレから抜け出そうとする気持ちが生じて来ること。作品中では、「新しい風が心に吹き込む」という表現がされているが、本作は、そういう成長譚、というか再生譚でもある。

で、最後は、船戸節で終わる。

■付記:
アリゾナの砂漠に浮かぶ赤い月の描写で、

Moon Palace

Moon Palace

を思い出した。思えば、この作品もロード・ムービーの要素が入っているなあ。