- 作者: 藤原伊織
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/07/15
- メディア: 文庫
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団塊酒場の常連という感じでありましたが。
ふむ。私が、本書を初読したのは、若かりし頃、近所の古本屋で、「このビデオは無修正ですよ!」とポップされているビデオを購入して、スキップして部屋に戻り、再生したところ、それは無修正に程遠いブツであり、悔し涙を流した翌日だったかな。
悔しさと怒りに溢れた私は、看板に偽りありのブツを陳列していた古本屋でパクって、読んだので、鮮明な記憶に残っている。*1
さて、初読の印象を思い出しながら列記すると、
と、良い印象を持っておらず、再読することはなかろう、と思っていた。しかし、冒頭に述べたように、著者が他界して、一部で話題になっていたこともあり、文庫化された本書を購入して読み直した。
−−−
「新宿セントラルパーク」について。これは、私の誤解であり*2、物語の核になるもので、派手派手しく連呼されているわけではなかった。
会話が村上春樹。これは、再読しても全くその通りで、赤面してしまった。引用してみよう。
私は顔をあげた。「めんどうじゃないことをたくさんやるか、めんどうなことをひとつしかやらないか。どちらかを選べっていわれたら、私はあとを選ぶタイプでね」
「ややこしいことをいいますね。このバーテン」
「ケチな男だよ」白いスーツが口を開いた。「実際、ケチな野郎だ。けどインテリだな。能書き並べるケチなインテリだ。そんややつほど話に筋をとおそうとするんだ。おれのいちばん嫌いなタイプだ」
プロットについて。その印象もあながち間違いではなかったが、それ以上に複雑なミッシング・リンクが幾重にも連なり、それが繋がったときのカタルシスは非常に大きかった。そして、「第三の男」に通じるものもあるのだが、それを掘り下げたどんでん返し(というのだろうか?)が仕組まれている。そうでなければ、このエントリは、ミステリ・ファンに袋叩きにされるネタバレエントリになってしまう。
・・・と、再読してみたところ、本書の印象は大分変わった面もある。
−−−
さて、一般的に本書をハードボイルド小説と捉える向きが多いかと思われる。しかし、そのような先入観を持って読み始めると、本書を破り捨てたくなる衝動が、沸き起こるかもしれない。
私は、初読時の「悪い印象」が、心に残っていたこともあり、期待せずに読んだ。それが、功を奏したのか、本書が、非常に良質なミステリ小説であることを発見したのだが。なにはともあれ、伏線の見事なる回収が、拍手喝采の一読モノである。
- 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: DVD
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