表紙に副題的に、「躍進するIT企業 階層化する労働現場 潜入ルポ」と記されている。アマゾンジャパンの物流センターへの潜入ルポルタージュ。しかし、看板に偽り無しであるところが、本書の本書たる所以であり、そこに魅力を感じるかどうか、読者の判断が分かれるところだと思う。この点については、後述する。キーワードは、「光と影」。
Amazon.co.jp「アマゾンジャパン」。まず、個人的な体験を書くと、2000年11月にAmazon.comが日本上陸して、まず感じたのは、海外書籍の安さだった。為替レートの関係が大きかったと思うが、丸善等の既存店舗の半額以下で、同じ本が購入できたのだ。私は、既存店舗で海外書籍を手に取り、内容に興味が湧いたらAmazon経由で購入するという、蛇の道的行為に及んだ記憶がある。
その後、私は、CD、DVDなど、既存店舗で購入するのと状態が等しいプロダクトについて、購買行動に走り、途中に追いかけ作家の和書新刊を購入することを挟み、最後は和書一般についてもAmazon.co.jpで購入することも多くなった。
そういう購買行動を自ら振り返ると、Amazon.comというのはweb2.0企業というよりも、インターネットの検索機能を大いに活用した旧態依然とした「便利」な流通企業だと常々考えていた。存在する「プロダクト」というものを巧みに右から左へ送り、利益を獲得するという意味で。
web2.0企業(って?ではあるが)は、漠然としたweb2.0という空気のようなものをまさぐり、あるいは御題目として掲げるだけで、利益には繋がっていないと思う。マーケティングに利用することが、手っ取り早くカネに化けさせる近道として、群がっているようにも思える。
さて本書。上記の私と同じ体験ルートを通じて、利用者を爆発的に増加させてきた「光」の部分が、アマゾンジャパン史として語られる。しかし、本書の白眉と一般的に理解されるのは、「闇」の部分だろう。引用する。
IT産業という一見華やかに見える業界の舞台裏では、いったいどんな人たちがどんな思いで働いているのか。どんな作業が行われているのか。それを自ら体験してみたかった。
という動機で、アマゾンジャパンの配送センターに、著者が時給900円のアルバイトとして潜入して、その体験をルポルタージュとしてまとめている。顧客からの注文をPスリップというリストを片手に、莫大な倉庫内で、プロダクトを探し回る。ノルマは、一分間に3冊。契約は、二ヶ月更新制。本書では記されていないが、ノルマを著しく達成できないアルバイトは、解雇され、新しいアルバイトに取って代わられるのだろう。その繰り返し。
エピローグで、著者は現場の空気を総括的に述べる。
今やっている仕事は、時給のために時間を切り売りしているにすぎないのだから、自分から積極的に何かを成し遂げようという気持ちはわいてこない。(中略)現代社会において「仕事=アイデンティティ」とするならば、自分の仕事に矜持をもてない状態がつづくことは、自尊心が蝕まれていくことであり、生活が荒廃していくことにほかならない。
−−−−−−
という単純労働の現場ルポもあるのだが、「光」という正史記述の合間にルポが挿入される印象があり、散漫な印象を受けた。また、プロローグで惹句的に述べられている
<BOOK OFF>との怪しげな取引の疑惑も見えてきた
についても詳しく明らかにして欲しかった。
・・・と最後に味噌をつけたが、巻末に添付されている「日米ネット書店の略年譜」及び膨大な「主要参考文献一覧」に象徴されるように、ネット書店の歴史を学び、今後の行く末*1を考えたい方には、お薦めの本です。
(本稿以上)

- 作者: 横田増生
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 2005/04/19
- メディア: 単行本
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<<参考リンク>>
■http://keroyan.exblog.jp/pg/blog.asp?dif=m&acv=2005-11-01&nid=keroyan#3020057
■http://keroyan.exblog.jp/pg/blog.asp?dif=m&acv=2005-11-01&nid=keroyan#3053532
*1:今後については、本書にも記されている。