垣根涼介「ヒートアイランド」(文春文庫):熱気から吹き込む冷気・・・

再読。

ヒートアイランド (文春文庫)

ヒートアイランド (文春文庫)

垣根涼介、直球内角高め一球入魂の傑作デビュー作!と書いたところで、実はデビュー作ではなくて、第二作だと気が付いた。デビュー作は「午前三時のルースター」。
さて本作品。全体の構図がやや複雑なんだけどネタばれにならない程度にまとめてみる。
(B)が(C)からかっぱらった大金が(A)の元に「転がり込んでくる」。転がり込んでくるという所がミソ。ちなみに(A)は渋谷のストリート・ギャング集団、(B)は裏金強奪のプロ集団、(C)は暴力団
右往左往する大金は(C)が経営する(?)裏カジノの売上金。この三つ巴の膠着したトライアングルに(d)という(C)とは異なる暴力団も参戦してくる。
(B)、(C)、(d)に追い込まれる(A)たちはどのような「プロット」で対抗するのか?というおそろしいまでに錯綜するプロットが展開される。錯綜しているのだが読者はしっかりとついていける筆致はお見事。
また興味深いのは人物。(A)集団のまとめ役アキが主人公である。ここまでは良いのだけれども、彼の人物像がほとんど浮き上がってこない。もちろん彼の背景はしっかりと描かれているとは思うのだけど薄い。(A)の中ではカオルのキャラが飛び抜けている。
同様に(B)における第二の主人公も同様。こちらは意図的に人物を薄く描いているのは確信犯*1。その分(B)における桃井の人物が対照的に浮き上がってきている。そして(C)集団の久間の人物像が作品中で一番際立っている(と思う)。
結局、本作品は、濃淡ある人物造型を伏線として感じながら、プロットの深みが楽しめる小説。再読だけど今年一番の収穫かな。
−−−
初読。
ギャングスター・レッスン (文春文庫)

ギャングスター・レッスン (文春文庫)

先に紹介した作品の続編。ぼろぼろで驚いた。プロットも人物もどこかにいってしまっていて悲しくなった。というかこんなものかな?って読む前から予想していたので、読了後も納得。
−−−
初読。
サウダージ (文春文庫)

サウダージ (文春文庫)

「ギャング」よりも上質。しかし「ヒートアイランド」の足元にも及ばない。ただしこの作品の主人公の悲哀は心に残る。ただし、垣根節が濃厚に紐解かれていて嫌になった。
垣根節。読んでいてぐったりするほどまでの性描写。純情な私だけでなく、普通の感覚を持った読者にとっても苦しくなってしまうんじゃないかな?
−−−
帯で紹介されていた。
ボーダー

ボーダー

傑作「ヒートアイランド」で登場した銘脇役カオルと主人公アキが再会するんだってさ。これは期待できるかも。

*1:って偉そうに書いているけれどもホ作品を読めば誰でもわかる。