北村薫といえば、大々的な殺人事件ではなく、普通の生活空間における謎、所謂「日常の謎」を題材にしたミステリの先駆者。その「彼」*1が、「国名シリーズ」に代表される初期E・クイーンをパスティーシュしたのが本作である。
ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/04/20
- メディア: 文庫
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さて、本作は長編として、50円玉硬貨の謎を解きほぐすという物語である。そして、先に述べたようにクイーンのパスティーシュという縛りを利かせるというミステリ・ファンにとっては、非常に魅力的な題材を料理している。
料理はうまく調理されたか?
まず50円玉硬貨の謎について。これは驚きを展開して、見事な収斂に落ち着かせており、読む人をうならせるものがあった。そして、そのような収斂は、「クイーンらしさ」との相乗効果も抜群で、1+1が3にも4にもなって成就している。
そして、クイーンのパスティーシュとしてはどうか?これは、私が初期クイーンを読んだのが、遠い過去であるという私的理由もあり、成功したか否かは不明。「らしさ」は十分に出ていると思う。
しかし、なによりも先に述べたように、50円玉硬貨の謎を「探偵」クイーンが解きほぐすという点はすばらしく、何度も強調したい。
読了後、初期クイーンを乱読したい気分になった。
*1:女子大生の視点から描かれている作品集でデビューしたこともあり、女性ではないか?とも考えられていた。