けろやん。メモ

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 北村薫「ニッポン硬貨の謎」(創元推理文庫):偉大なる融合

北村薫といえば、大々的な殺人事件ではなく、普通の生活空間における謎、所謂「日常の謎」を題材にしたミステリの先駆者。その「彼」*1が、「国名シリーズ」に代表される初期E・クイーンをパスティーシュしたのが本作である。

本作品の根底にあるミステリは、ある男性が50円硬貨20枚を1000円札に両替をするのは何のためか?というもの。この謎については、
競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

という短編連作集がある。話が逸れるが、同書は多彩な顔ぶれのミステリ作家が、前述50円玉硬貨の謎を題材にして、競作するというもの。私の好きな倉知淳も本名で書いた作品が同書に掲載されており、彼のデビューのきっかけになったと記憶している。

さて、本作は長編として、50円玉硬貨の謎を解きほぐすという物語である。そして、先に述べたようにクイーンのパスティーシュという縛りを利かせるというミステリ・ファンにとっては、非常に魅力的な題材を料理している。

料理はうまく調理されたか?

まず50円玉硬貨の謎について。これは驚きを展開して、見事な収斂に落ち着かせており、読む人をうならせるものがあった。そして、そのような収斂は、「クイーンらしさ」との相乗効果も抜群で、1+1が3にも4にもなって成就している。

そして、クイーンのパスティーシュとしてはどうか?これは、私が初期クイーンを読んだのが、遠い過去であるという私的理由もあり、成功したか否かは不明。「らしさ」は十分に出ていると思う。

しかし、なによりも先に述べたように、50円玉硬貨の謎を「探偵」クイーンが解きほぐすという点はすばらしく、何度も強調したい。

読了後、初期クイーンを乱読したい気分になった。

*1:女子大生の視点から描かれている作品集でデビューしたこともあり、女性ではないか?とも考えられていた。