けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 読書会報告〜あふれ出るタバコのメタファーにお楽しみ!

京極夏彦の「姑獲鳥の夏」と「魍魎の匣」についての読書会をやった。2016年8月27日(土)の朝8:00から駅前ドトールにて。集まったのは行きつけの居酒屋の知人3人(女性1人)。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

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以下、ネタバレ注意!
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私は上記作品の再再再読(目くらいかな?)して臨んだんだけど、とにかく内容の忘却度合いの激しさに恐れおののいた。「姑獲鳥」の三重人格の件とか完全に抜け落ちていたぞ・・・。まあ、こういう忘れっぽさがあるから、再読の楽しみっていうのがワクワクなんだけど。
それにしても疲れた。ナニに疲れたのかというと、読書会に備えての読書に疲れた。十分な時間があったのだから、前もってしっかりと読み返しておけばよかったのに、直前になるまで「魍魎」に没入できず、その分厚いレンガ本(文庫本では4.5センチの厚さ)が魍魎として、現実世界の私にのしかかってきた。読了したのは前日の夜中。
当日はだいたい予想していたことではあったけど、時間通りに集合したのは私だけ。その私は約束時間前に入店して、試験直前のように勉強しようとしたんだけど、店は開いておらず小雨の中店先でレポート用紙に書きなぐったメモを読んでいた。ドトールの開店時刻って7:30だと思っていたけど、土日は8:00からなのね。
それにしても開店直後の喫茶店というのが、思いのほか気持ちよかった。喫煙スペースのソファで足を放り出して一服したり、小雨の淡いを窓から眺めたり。クセになりそうな気持ちよさだったよ。
さておき、時間通りに集まったのは私だけで、一人が集まり、二人が集まり、もう一人は連絡するもまったく反応がなく「私たちには見えないけど、そこの空いた椅子に座っているのかもしれないね、関口くん。けけけ!」って笑っていたら、ようやく昼過ぎに到着。まあ、こんなものでしょう。
私は以下のメモを中心に感想を述べた。「魍魎の匣」についてね。

事件は、文字通りバラバラなバラバラ殺人事件とか、他のバラバラが扱われるんだけど、作品の構成もバラバラがキーになっていると思って書いたメモなんだ。
京極堂シリーズのメインキャストの4人が、それぞれの視点から「バラバラ」に事件を展望する。そして、読者にはそのバラバラが、バラバラという平面ではなく、立方体の「匣(はこ)」という構成物として鳥瞰できる。
でも、それは幻想であって、匣は最後まで読み解かないと立方体という完成物たり得ない。これを考えながら、私は書籍というものは、あまねくそのようなメディアであるなあ、と再確認した次第。したがって、本作品のテーマ(あるいは衒学)は書籍なのかもしれない。
読書会参加者からの声でおもしろかったのは、つぎの二点。
ひとつは、両作品が上下巻作品と呼(読)んでもおかしくないくらいの関連性を持っているという点。これは、私も今回読みなおしていて、気がついていたんだけど、「姑獲鳥の夏」があらゆる意味で語り手(私=関口)の物語であるのに対して、「魍魎の匣」はメインキャストの一人である木場の物語であると同時に、先に述べたように複数の視点からの物語が混合している。
これは単純に小説が一人称だとか三人称だとかという話ではなく(事実「魍魎」でも関口の一人称は残っている)、物語をメタレベルで考えた時、ニ作品は表裏をなしているということ。読書会参加者のみんなの思いが、正確にそうであるとは断じ得ないけど、私はそう受け取った。その私の受け取りに関しても、今回の読後感であり、次に読み返した時はちがうかもしれないけど。
二点目。「魍魎の匣」に関しては、とにかく順番の物語である!と言う声が大きかった(良い意味での声の大きさね)。これについては、私は脱帽。まったく気にしていなかったよ。こっちは、これから読む人のお楽しみで詳しくは書かないでおこう。順番に注意して読むと「ほほう!ほほう!」って嬉しくなると思うよ。
最後に、小さな伏線を書いておこう。
姑獲鳥の夏」に関しては、第1章全体が極めて重要な伏線の伏魔殿になっている。たくさんあるんだけど、ひとつ例をあげると不確定性原理ね。おっと書いてあったぞ。
けろやん。メモー1927年のハイゼンベルク
魍魎の匣」に関しては、謹慎中の木場が再起を決意する場面。灰皿からタバコやら灰が溢れちゃっている。これ「はこ」の決壊を表したものだと思うよ。おっと書いてなかったぞ。
魍魎の匣」は順番の物語であるけど、それは(やや)マニアックな読み解きであり、一般的には「箱(はこ)」の物語なんだ。
そんなわけで、明日から読書の秋なる9月。月を眺めながら分厚い物語に没入するのも気持ち良いですよ!
(付記)
京極夏彦については、こちらでも書いていた。
けろやん。焼き芋ーnot書評:山田正紀「ミステリオペラ」〜僕の右手を知りませんか?
関係ないけど、この頃はブログに文章を綴るのが、本当に楽しかったみたいだなあ(´・ω・`)・・・。いまはその熱量が下がっちゃっているよなあ。