けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 ジャック・リッチー「クライム・マシン」(晶文社ミステリ):とりあえず芳醇じゃない。

読んだ。

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

久しぶりの翻訳もの。「このミステリーがすごい!」2006年海外編第一位。
「このミス」の国内編は、逢坂剛浅田次郎、あげくには馳星周不夜城」なんかが一位になっていたりするのでもうよくわからない。ミステリの読書ガイドになっていない。
でも、海外編はわりと鉄板ものが多い。私の中では、ここから手に取って読むというのが、わりとなファーストコンタクトになっている。と書くと、
Amazon書評:孤独なサラリーマンのイカ臭い妄想小説, 2013/5/3
になっちゃうので、要するに本を読むきっかけになっている。
たとえば、2012年の第一位のこの作品。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

最悪だった。途中で捨てた。
ということもままあるけれども。ちなみに、この「二流小説家」。この間、コンビニに行ったら本棚に突っ込まれていた(ので人気本なんだろうけど)。
でも、この本。腐ってもポケミスだぞ。昨今のコンビニは恐れを知らぬものと見える。というか、そういうコンビニの「進化」が私には怖ろしい。というか、この本って文庫になっているのに、あえてポケミスを選択して陳列しているのが恐ろしい。
と、うれしそうに書きながら、ポケミスだからこそのコンビニ戦略なのかもしれないと思いなおした*1。このことなんかについては他のエントリで書くかも。
−−−
さて、本書。短編集だ。解説を読むと、「職人芸ともいうべき簡潔なスタイルで」350篇にも及ぶ短編集を書き続けたとのこと。あれ?星新一はどのくらい書いたんだっけ?調べてみた。

SFを中心に生涯1000編を超える作品を執筆し、現在も国内外で人気の「ショートショートの神様」星新一の公式サイトです。

おお!1000篇を超えちゃっていますか!
というか、ここで星新一の名前を出したのは、本書の位置付け、というか感触が良く分からないから。
まず表題作は外れ。星新一、あるいは彼のファンには申し訳ないけど、星新一風のショート・ショートで立ち枯れている。いや、星新一風味が駄目なのではなく、本書に私が期待していたものと異なっていたということ。
でも「日当22セント」という作品は、ハードボイルド風味で小気味よく物語が進み、最後の大どんでん返しに驚愕した。驚愕という言葉は適当ではないのだけど、他の言葉が思いつかない。なんていうか、目が覚めるって感じかな。
他の作品から引用する。

「幸運をお祈りします」わたしは言った。「たしかに幸運は必要だ」彼は陰気に言った。「マラヤでは虎を狩った。ケニヤでは豹を、カナダでは灰色熊を。だが、獲物を仕留められたことは一度もないんだよ」

ペーストっていうのかしら?こういうボケ&ツッコミが随所に散りばめられている。成功しているのは、あんまりないけど・・・。
−−−
じつは、レイ・ブラッドベリを期待していた。
けろやん。焼いも。:考察:翻訳について?〜ブラッドベリは原著に勝りきや?
正確に書くと、前述「日当22セント」が登場して読み終えて目が覚めたときに。でも、そういう風には進まず読了。
なんか、欲求不満が残るというか、立ちあがった欲求が解消されずに終わったという感じ。つまりは、まさしく欲求不満ということなんだろうけど。
翻訳について。上記エントリの小笠原豊樹の豊潤な翻訳(文章)に比べると、本書の翻訳は正反対。包丁を研いで包丁本体を削り落していくような感じ。ハードボイルド翻訳のモード。
ああ、難しく書いているけど、モードって規範、あるいは「お約束」ってことね。さておき、訳者に四人が名を連ねている中での翻訳なので、原書も研いで削った文章なんだろうな。
という感じで、欲求不満な印象が強かったんだけど、他の作品も読みたくなったぞ。なにしろ欲求不満だからね。

10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)

10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)

参考:アブソリュート・エゴ・レビュー:クライム・マシン

*1:ポケミスだぜ!ってなんかお洒落だし、なによりも黄色の背表紙が目立つしみたいな。想像だけど