読了日:2021年3月25日(木)
読書経緯:所蔵
書誌情報:1990年9月 カッパノベルスより刊行
<感想>
綾辻行人「十角館の殺人」(1987年)を嚆矢とする新本格ムーブメント真っ只中に発表された、ハードボイルド山塊からあがった狼煙ともいえる作品。
しかし、大沢にとってそんなことは関係ないだろう。
なにしろ1979年「感傷の街角」でデビューして以来、まったく売れなかった雌伏の十年。
本作はそんな彼のブレーク作品である。
さて内容を見てみよう。
まずは、現在12作目が雑誌連載されている新宿鮫シリーズであり、その端緒が本作なのであるが、もともとシリーズ物として書かれる予定ではなかったらしい。
したがって、単体でまとまっているのがよい。すなわちシリーズに寄りかかっていない初期鳴動感あふれる作品なのだ。
またヒロインである晶のキャラクターも抑えられていて、個人的に好感を持てる。そういえば、最新刊(「新宿鮫11」)あたりになると彼女は登場しなくなってくるな。
そして、シリーズ第一作としての魅力ももちろんある。
後の作品で重要な役回りを持つことになる魅力的な登場人物が一堂に会しているのだ。たとえば、「風化水脈」の主役を演じるやくざ真壁も顔見せする。
そんなこんなで、単体としても読め、シリーズ物の端緒としても読める本作品。
おすすめです。
(本文以上)
光文社文庫版の解説は北上次郎。新宿鮫の登場を狂喜乱舞、あるいは歓喜雀躍を抑えてしっかりと解説してる。
また新宿鮫シリーズについては、日本推理作家協会編「ミステリーの書き方」(幻冬舎文庫)の大沢の項に詳しい。
インタビューアーは、こちらも北上次郎。(本稿以上)
<ツイッターのリード文>
おはようございます。大沢在昌「新宿鮫」の感想文を書きました。新宿鮫というとシリーズ物でもありますが、本作がシリーズ第一作ということもあり、単体でも楽しめますよ。何度も読み返している作品です。