けろやん。メモ

はじめまして。こんにちは。

 森達也「下山事件」〜泥沼に沈む「真実」

読んだ。

下山事件

下山事件

書くまでもないとは思ったんだけれども、なんというか本題をはずれたところが面白いっちゃ面白いので書いてみる。
一応、真面目なところから。副総裁関与説、佐藤栄作元首相周辺関与説なんかが展開されている。とはいえ、この辺は既知の話じゃないかな?興味深かったのは、キャノン機関の本部が岩崎邸であったというところ。
http://d.hatena.ne.jp/kerodon/20100520/1274328263
これも有名な話かな。ただし、私が邸を訪問したとき、うろ覚えなんだけれども「ここにはビリヤード台が置かれていました」という風に案内されていた記憶がある。このビリヤード台。どうやら、キャノン機関が本部を設置していた時期に置かれた物らしい。なるほどね。
まあ、話としてはここでおしまい。この本、途中からどうも嫌な匂いが漂ってきて胡乱な思いにとらわれたのだけど、案の定やってくれました。詳しいことは、後に貼るリンクを参照していただくことにして、三つ巴のバトルが繰り広げられる。
まず、本書の発表に先立ち、筆者とタッグを組んでいた記者が、「抜け駆け」する形で書を物す。その後、「二番煎じになるのは構わない」と言わんばかりに本書が刊行される。そして三段落ち。本書で『彼』と記され、重要な位置付けとなっているライター『彼』が書を刊行する。本書に対して捏造であるという趣旨の記載が含まれている本(らしい)。
で、本書の著者(ややこしいのだけれども森達也さん)は、あとがきやら文庫版あとがきで、ぶっ壊れたような恨み節を吐き出す。
まず、インターネット上の言葉を引用。

ええかっこしいブサヨは捏造がお得意だからなw

あるいは、

テレビ屋はヤラセが日常だから、倫理感が麻痺してる奴が多いんだろうなぁ

こんなもん拾ってきて開陳するなよ(笑)。まあ、これに対して、筆者(くどいようだけど森達也さん)応えて曰く、

他にもたくさんある。生きてゆくことが嫌になるくらいにたくさんある。(略)ミスについては釈明せねばならないだろうとは思っていた。

と、なかなか愁傷なことを述べていますが、

僕は事件の真相に途中から興味を失った。僕の本の価値は(もしもあるならば)事件の真相にはない。

なんていうか、なにもかもをも捨て去って、自らガソリン被って火をつけちゃったみたいな感じ。まあ、このあとがきもなんなんだけれども、本文の最終コーナー回って直線コースの詩情的趣きもなんなんだろう。うん。なんか、ものすごい本だということはわかった。
さて、この森達也という人。「ことのは」の頃にも燃料投下していなかったっけ?と思い倫敦橋さんのところで探してみた。
http://londonbridge.blog.shinobi.jp/Entry/325/
そのものずばりではないけれども、当該エントリの引用部分も含めて読むと燃料化している。ああ、燃料と書いたら失礼かな。
結論。棄ててしまいたい本だけれども、なんだか愛着が涌くというアンビバレントな本。まあ、悪い病気が移りそうだから、多分、棄てるな。